HOME  >  平成18年度短時間労働者雇用管理改善等事業特集
平成18年度短時間労働者雇用管理改善等事業特集
事業主としてパートタイマーを使用する場合、知っておくべき労働法のQ&A その3
Q 正社員とパートタイマーの労働条件の差異は適法ですか?

労働基準法3条(均等待遇の原則)では「使用者は労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取り扱いをしてはならない」とされています。ここでパートタイマーは社会的身分かという点が問題となりますが、社会的身分とは、生来の社会的事情によって生じている他人と区別させる永続性を有する地位をさし、パートタイマーは社会的身分ではないとされています。したがって、一般的には正社員とパートタイマーとの労働条件の差は違法ではありません。

しかし、正社員とパートタイマー(疑似パート)との大幅な賃金格差を公序良俗違反とした裁判例もあります。(平成8年3月15日長野地裁上田支部判決、丸子警報器機事件)

そこでパートタイム労働指針では「人材活用の仕組みや運用などが正社員と実質的に異ならないパートタイム労働者について、同一処遇の決定方式などの措置を講じた上で、意欲、能力、経験、成果などに応じて処遇することにより正社員との均衡の確保を図るよう努める」とし、正社員と職務が同じパートタイマーについて「正社員との均衡」を図るよう示しています。

Q 疑似パートとは何ですか?

疑似パートとは、実質的に仕事の内容や就労時間などその実体が正社員と異ならないのに、パートタイマーとされている労働者のことを言います。フルタイム・パートとも呼ばれたりします。具体的には、正社員と同じように基幹的な仕事を任されたり、残業も正社員と同じように行っているのに、労働契約は有期雇用、賃金の支払いは時間給で、正社員と比較して年収でかなりの格差がある。賞与はないことが多く、あったとしても金一封程度で、社員への昇格制度もないなどのケースが該当します。

Q パートタイマーにも年次有給休暇を与えなければなりませんか?

労働基準法第39条では、「使用者は、その雇入れの日から起算して6ヶ月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない」としています。パートタイマーも労働者ですから年次有給休暇を与えなければなりません。

  1. パートタイマーのように週所定労働日数又は年間の所定労働日数の少ない者には、年次有給休暇を比例付与することとされています。
  2. 期間を定めた労働契約であっても、契約の更新等により事実上6ヶ月以上継続して勤務している者には、年次有給休暇を付与することが必要です。
  3. 出勤率の算定に当たって、業務上の傷病による休業期間、産前産後の休業期間及び育児・介護休業法に基づき育児休業及び介護休業を取得した期間は出勤したものとして扱います。また、年次有給休暇を取得した日については出勤したものとして計算する必要があります。
  4. 年次有給休暇の時季の変更は、事業の正常な運営を妨げる場合にのみ認められていることに留意し、安易に行わないことが大切です。
Q パートタイマー用の就業規則をなぜ作らなければなりませんか?

労働基準法第89条では、常時10人以上の労働者を使用する使用者の作成届出義務が定められています。すでに就業規則を作成し届け出ており、正社員のほかにパートタイマーを採用し正社員の就業規則をパートタイマーに適用しないのであれば、法違反となります。すなわち、就業規則が適用されない労働者が一人でもいることは、その労働者について就業規則が作成されていないことになるからです。

パートタイマーについては、通常の従業員に適用される就業規則を準用する形としたものが多く見られますが、勤務態様や賃金形態が通常の従業員と異なるパートタイマーには適当でないと思われる場合がありますので、必要に応じパートタイマーの勤務態様等の実態に合うように改めるか、パートタイマーを対象とした独自の就業規則を作成するなどの工夫が必要です。

Q 退職と解雇はどこが違いますか?

退職も解雇も労働者が辞めることに変わりありませんが、「解雇」は使用者側からする労働契約の一方的な解除を言い、「退職」はそれ以外の労働契約の終了を言います。特に「解雇」は、さまざまな法律上の制限が生じますので注意が必要です。

【退職に該当するケース】

  1. 任意退職
  2. 無断退職
  3. 契約期間満了
  4. 休職期間満了自動退職
  5. 行方不明期間経過による自動退職
  6. 定年退職
  7. 死亡

【解雇に該当するケース】

  1. 普通解雇
  2. 懲戒解雇
  3. 諭旨解雇
  4. 整理解雇
  5. 事実上期間の定めのない契約更新拒否
  6. 本採用拒否
  7. 採用内定取り消し

Q パートタイマーの退職について注意すべきことは?

期間の定めのない雇用の場合、パートタイマーが本人の都合により退職しようとするときは、いつでも退職を申し出ることができます。退職の申出をした日から起算して14日を経過したときは、会社の承認の有無に関わらず退職となります(民法第627条)。労働契約期間を定めて雇入れた場合は、その期間が満了すれば当然退職になります。しかし、期間を定めた契約が反復更新され、実質的に期間の定めのない労働契約関係にあると認められる場合、更新の拒絶をするには解雇として扱う必要があります。

女性パートタイマーが女性であること、結婚、妊娠、出産したことを退職の理由として定めることはできません(男女雇用機会均等法第8条)。

パートタイマーから使用期間、業務の種類、その事業における地位・賃金又は退職事由(解雇の場合は、その理由を含む)について証明書を求められた場合、求められた事項について証明書を交付する義務があります(労働基準法第22条)。

Q パートタイマーの解雇について注意すべきことは?

パートタイマーの解雇は、正社員と違って採用手続きが簡単で、臨時的な雇用形態として、社会に広く定着しています。パートタイマーの解雇理由は、「業務上必要としない、正社員で充当、経済事情の変動等により剰員を生じる」等のように、正社員よりも幅広く認められる傾向があります。しかし、使用者が何も理由がないのに、自由に解雇することはできません。パートタイマーを解雇するときは、「客観的にみて合理的で社会通念上相当な理由が必要で、これを欠く場合は一般に解雇権の濫用として無効となります」(労働基準法18条の2)解雇をめぐって労使間でのトラブルが生じないよう、就業規則において解雇の理由や手続き等を明確に定めておくことが必要です。

パートタイマーを解雇するときは、原則として少なくとも30日前に予告をするか、又は平均賃金の30日以上の解雇予告手当を支払うことが必要です。ただし、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となったとき、又は重大な服務規律違反などパートタイマーに悪質な行為があったときで事前に労働基準監督署長の認定を受けた場合は、解雇の予告又は解雇予告手当を支払う必要がありません。

パートタイマーの業務上の負傷、疾病による休業期間とその後30日間及び産前産後の休業の期間[産前6週間(多胎妊娠にあっては14週間)以内又は産後8週間以内の女性が休業する期間]とその後30日間は、解雇はできません。また、結婚・妊娠・出産又は産前産後休業をしたことを理由として解雇してはなりません。ただし、天災事変その他やむを得ない事由によって事業の継続が不可能となったときで事前に労働基準監督署長の認定を受けた場合、又は業務上の事由による負傷、疾病の従業員が療養開始後3年を経過した日において傷病補償年金を受けている場合(又はその日以降、同年金を受けることになった場合)は、解雇制限が解除されます。

労働基準法等の規定により、次のことを理由として、解雇その他不利益な取扱いをすることが禁止されています。

  1. パートタイマーの国籍、信条、社会的身分(労働基準法第3条)
  2. パートタイマーが労働基準監督機関に申告したこと(労働基準法第104条、労働安全衛生法第97条)
  3. パートタイマーが女性であること、女性従業員が結婚、妊娠、出産し、又は産前産後の休業をしたこと(男女雇用機会均等法第8条)
  4. パートタイマーが育児休業及び介護休業の申出をしたこと、又は育児休業及び介護休業をしたこと(育児・介護休業法第10条、第16条)
  5. パートタイマーが労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、又は加入しようとしたこと、労働組合の正当な行為をしたこと(労働組合法第7条)

Q 当社で3年近くパートタイマーとして働いている人がいます。これまで2ヶ月ごとの契約更新を繰り返してきました。契約を打ち切ろうと思いますが、契約期間満了で退職させることができるでしょうか?

期間の定めのある労働契約の場合は、その期間が満了したときに労働契約が終了するのが建前です。しかし、形式的に契約更新を繰り返している場合は、建前どおりの評価ができない場合があります。Bさんのように期間契約を3年近くも反復更新しているケースでは、労働者側にも次の契約を更新してくれるという期待が大きくなってきます。過去の多くの裁判例ではこのような場合、実質的に期間の定めのない契約とみなされています。こうした一方的な契約打ち切りは解雇とみなされます。会社が労働者を解雇する場合、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」(労働基準法第18条の2)とあります。つまり普通誰が見ても解雇はやむをえないと考えられる理由が必要です。また30日前の解雇予告か解雇予告手当を必要とします。

Q パートタイマーにも賞与や退職金を与えなければなりませんか?

賞与制度を設けることは、法律によって義務付けられているものではありません。ただし、パートタイマーに賞与を支給することとする場合は、就業規則に支給の時期、条件などを明らかにしておくことが必要です。

退職金の制度を設けることも、労基法その他の法律によって義務付けられているものではありません。ただし、退職金制度を設けるときは、退職金支給をめぐるトラブルを防ぐため、適用される労働者の範囲、退職金の決定、計算及び支払いの方法並びに支払いの時期等を就業規則に記載しなければなりません。退職金制度を設けたときは、退職金の支払いにあてるべき額を金融機関との保証契約等により保全措置をとることが努力義務とされています。

パートタイマーの退職金について「中小企業退職金共済制度」又は「特定退職金共済制度」に加入している事業場は保全措置の必要がありません。