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平成18年度短時間労働者雇用管理改善等事業特集
事業主としてパートタイマーを使用する場合、知っておくべき労働法のQ&A その5
Q 被扶養を考える上で社会保険と税金での取り扱いはどう違いますか?

 社会保険と税金では、扶養について取り扱いが違います。
 社会保険の被扶養者については(1)「被保険者の収入で生計を維持している」状態の者で、年収が130万円(60歳以上又は障がい者は年収180万円)未満であること、(2)失業給付を受給中の人の場合は基本手当日額が3,611円未満の人であること、が要件となっています。
 税金面で扶養家族になるためには、以下の用件(1)〜(4)をすべて満たしている必要があります。

  1. 納税者の親族で生計を一にする人(原則として同居、単身赴任は認められる、また学業のためアパートや下宿している場合も認められる)
  2. 年間の合計所得金額が38万円に満たない人(給与所得控除65万円→年収103万円)
  3. 青色事業専従者、事業専従者でない人
  4. 他の人の扶養親族、控除対象配偶者になっていない人

社会保険と税金の取り扱い
社会保険 税金
収入
基準 通勤手当も収入に含まれる
年間ベースで130万円超を見込まれる月から非課税を除く
1〜12月の合計
配偶者 事実婚を含む 法律上の夫婦のみ対象
扶養 社会保険上の扶養被扶養者制度 税制上の扶養
扶養控除、配偶者控除、配偶者特別控除

Q サラリーマンの所得税と住民税はどういう仕組みで徴収されていますか?

 所得税は、通常「申告納税制度」が建て前とされていますが、給与所得者の場合は、事業主が給与支払いの際に所得税を徴収して納付する源泉徴収制度が採られていますので、申告の必要がありません。ただし、雑損失控除、医療費控除、寄付金控除を受けようとするときは、申告しなければなりません。
 住民税には県民税と市町村民税があり、住んでいる都道府県と市町村に一定額を納める「均等割」と前年の所得額に応じて納税額が決まる「所得割」があります。徴収事務は市町村が行います。所得税の確定申告書を提出した人は、住民税の申告書の提出の必要はありません。また、給与所得のみの人は申告の必要はありませんが、雑損失控除、医療費控除、寄付金控除を受けようとするときは、申告しなければなりません。

Q 所得税と住民税の計算の仕方を教えてください。

☆所得税の場合

  1. 給与収入(1月〜12月)から非課税部分を除きます
  2. 次に給与所得控除と所得控除を除きます。
  3. 残額が非課税所得です。これに所得税率をかけ、税額を算出します。
給与収入−給与所得控除額−所得控除額=課税所得金額

 給与所得の金額の計算は、給与の収入金額から給与所得控除を差し引いて給与所得の金額を算出します。給与所得者には勤務に伴う必要経費などの概算控除として給与所得控除が給与の年収額に応じて定められています。

課税所得金額×税率=課税額

 課税所得金額の計算は、給与所得の金額から所得控除額を差し引いて課税所得金額を算出します。所得控除には扶養控除など15種類あります。
 所得税額の計算は、課税所得に税率をかけて、所得税額を算出します。

給与収入と給与所得控除額の関係(所得税・住民税共通)
給与収入(A)給与所得控除額
162.5万円未満65万円
162.5万円以上180万円以下(A)×40%
180万円超360万円以下(A)×30%+18万円
360万円超660万円以下(A)×20%+54万円
660万円超1,000万円以下(A)×10%+120万円
1,000万円超(A)×5%+170万円

所得税の税率
課税所得金額(A) 税率(B) 控除額(C)
税額=(A)×(B)−(C)
330万円未満の金額10%−(A)×10%
330万円以上900万円未満の金額 20% 330,000円
 (A)×20%−330,000円
900万円以上1,800万円未満の金額 30% 1,230,000円
 (A)×20%−1,230,000円
1,800万円以上 37% 2,490,000円
 (A)×37%−2,490,000円

☆住民税の場合
 個人の所得に応じて納める所得割と均等の税額により納める均等割からなっています。給与収入が100万円以下ですと給与所得の金額が住民税(所得割)の非課税限度額(35万円)以下になりますので、住民税(所得割)はかかりません。

住民税の所得割の税率及び控除額
課税所得金額 市民税 県民税
税率 控除額 税率 控除額
200万円以下の金額 3% − 2% −
200万円超700万円以下の金額 8% 100,000円 2% −
700万円超 10% 240,000円 3% 70,000円

住民税の均等割額表
市民税 年額3,000円
県民税 年額1,000円
Q 給与収入と税金の関係は?

パートタイマーが働く場合、給与収入と税金の関係は、下表のとおりです。

 
給与年収額 所得税 住民税(所得割)
〜1,000,000円 かからない かからない
1,000,001円〜1,030,000円 かかる
1,030,001円〜  かかる
Q 私のパート収入と主人の税金はどういう関係になっていますか?

 パート年収に応じて、ご主人に配偶者控除又は配偶者特別控除が使えます。
 配偶者控除は、パートタイマーの配偶者が納税者で、パートタイマーの収入が年間で103万円以下の場合は、パートタイマーの配偶者である納税者の所得金額の合計額から38万円の配偶者控除が認められます。ただし、配偶者が70歳以上の高齢者や特別障がい者の場合は控除額が増額となります。(この章末の図表「所得控除一覧」をご覧ください)配偶者特別控除は、納税者の合計所得が1,000万円以内の場合に、配偶者の年収に応じて下の表のように決められています。

 
(所得税の配偶者控除及び配偶者特別控除)
パート年収 配偶者控除 配偶者特別控除 控除合計額
103万円以下 38万円 0 38万円
103万円超 105万円未満 0 38万円 38万円
105万円以上 110万円未満 0 36万円 36万円
110万円以上 115万円未満 0 31万円 31万円
115万円以上 120万円未満 0 26万円 26万円
120万円以上 125万円未満 0 21万円 21万円
125万円以上 130万円未満 0 16万円 16万円
130万円以上 135万円未満 0 11万円 11万円
135万円以上 140万円未満 0 6万円 6万円
140万円以上 141万円未満 0 3万円 3万円
141万円以上 0 0 0
   
 
(住民税の配偶者控除及び配偶者特別控除)
パート年収 配偶者控除 配偶者特別控除 控除合計額
103万円以下 33万円 0 33万円
103万円超 105万円未満 0 33万円 33万円
105万円以上 110万円未満 0 33万円 33万円
110万円以上 115万円未満 0 31万円 31万円
115万円以上 120万円未満 0 26万円 26万円
120万円以上 125万円未満 0 21万円 21万円
125万円以上 130万円未満 0 16万円 16万円
130万円以上 135万円未満 0 11万円 11万円
135万円以上 140万円未満 0 6万円 6万円
140万円以上 141万円未満 0 3万円 3万円
141万円以上 0 0 0
Q 所得税の税額の具体的な計算方法を教えてください?

サラリーマン八千代さん家族の場合を考えて見ます。
家族構成/夫:47歳、妻:無職45歳、長女:高校2年、長男:中学1年
収入700万円、社会保険料871,840円、生命保険料10万円

 
収入 7,000,000円 …A
給与所得控除 1,900,000円 …B
 (A×10%+1,200,000)円
所得控除 基礎控除 380,000円  
配偶者控除 380,000円  
扶養控除 1,010,000円  
 (長女 630,000円 長男 380,000円)
社会保険料控除 871,840円  
生活保険料控除 50,000円  
 合計 2,691,840円 …C
 課税所得(千円未満切捨)
A−B−C=2,408,000円 …D
年調年税額 240,800円 …ED×10%円
Q 住民税の税額の具体的な計算方法を教えてください。

さきほどの八千代さん家族の場合を考えて見ます。前年の年収700万円

 
前年の収入 7,000,000円 …A
給与所得控除 1,900,000円 …B
 (A×10%+1,200,000)円
所得控除 基礎控除 330,000円  
配偶者控除 330,000円  
扶養控除 780,000円  
 (長女 450,000円 長男 330,000円)
社会保険料控除 871,840円  
生命保険料控除 35,000円  
 合計 2,346,840円 …C
 課税所得(千円未満切捨)
A−B−C=2,753,000円 …D
住民税 均等割 4,000円 …E
 県民税1,000円 市町村民税3,000円
所得割 175,200円 …F
  県民税 D×2%=55,000円
  市町村民税
   D×8%−100,000円=120,200円
合計 179,200円  
注:定率減税は考慮していません。
Q 妻のパートタイマーの年収が増えれば、社会保険と税金との関係はどう変わりますか?

 配偶者も会社員の場合、パートタイマーの年収と税金、社会保険との関係は下の表のようになります。

 
年収 〜70万円 〜100万円 〜103万円
〜130万円 〜141万円 141万円〜
ご本人は
どうなる 所得税はかからない
所得税を自分で払う
地方税所得割は
かからない  地方税所得割がかかる
社会保険料を払わなくてよい
社会保険料を払う
配偶者とは
どうなる 配偶者控除を受けられる
配偶者特別控除を受けられる
配偶者控除・配偶者特別控除を受けられない
←配偶者手当をもらえることが多い
配偶者手当をもらえなくなることが多い→
Q パートタイマーから103万円の壁という言葉を聞きましたが、どういう意味ですか?

 年末が近づくと主婦のパートタイマーが年収103万円を超えそうだからという理由で休む現象がよく見られます。夫が給与所得者で妻がその被扶養家族である場合、パート収入が103万円以下(1月〜12月)であれば所得税がかからず、かつ夫には38万円の配偶者控除が適用されますので、その分夫の税金が減ることになります。パートタイマーが年末に近づくと年間収入が103万円を超えないように就業調整するのは、このためです。
 給与所得については、給与所得控除(65万円)が必要経費に相当するものとして認められています。また所得控除のひとつとして基礎控除(38万円)が受けることができます。給与所得控除と基礎控除の合計103万円までは誰でも所得税がかからない仕組みになっています。ただし、パート収入が103万円を超えてもご主人は、配偶者控除がなくなる代わりに配偶者特別控除が使えるため、夫の税金が一気に増えるということはありません。
 ここで注意したいことがひとつあります。ご主人の会社の給与規定で「配偶者手当を支給する。ただし、配偶者の年収が103万円を超えた場合、これを支給しない」と定められている場合です。仮に奥さんが年収103万円以上あり、ご主人が月1万5千円の配偶者手当を受給していた場合、年間18万円の配偶者手当の返還を会社から求められることがあります。

Q パートタイマーから130万円の壁という言葉を聞きましたが、どういう意味ですか?

 すでに前のQでお答えしましたが、パートタイマーが自ら社会保険に加入するかどうかの基準は、収入ではなく働き方によって決まります。その前提でお答えしますが、社会保険の被扶養者に入るかどうかの判断基準は、被扶養者の年間収入が130万円以上見込めるかどうかです。妻の年収見込額が130万円を超えると、社会保険の夫の扶養からはずされ、ご自分で何らかの社会保険に加入しなければなりません(国民皆保険)。
 したがって、国民年金と国民健康保険の保険料がここでかかってきます。国民年金の保険料は月額13,580円(平成18年度価格)です。国民健康保険料は市町村ごとに決められています。

Q パートタイマーはどのくらいの収入で働いたら家計全体の収入を減らさずにすむでしょうか?

 モデルケースとして、前のQの例で専業主婦八千代A子さんが、パートタイマーとして働きに出た場合を考えてみます。ご主人の会社では配偶者の年収が年間103万円を超えると、配偶者手当月額1万5千円がカットされると想定します。次の(1)〜(4)を考えてみる必要があります。

  1. A子さん(妻)の税金
     A子さんの年収が103万円を超えると、超えた部分に10%の税金が課税されます。住民税は、給与収入が100万円を超えると、98万円を超えた部分に5%課税されます。しかし、年収が増えても家計の手取額は増えるので、影響は小さいと言えます。
  2. A子さん(妻)の社会保険
     A子さんの年収が130万円以上(通勤手当を含む)の場合、B夫さんの被扶養者とは認められません。A子さんの勤務する事業所が社会保険適用事業所でなければ、自分で国民健康保険、国民年金に加入することになります。社会保険料の負担は、年収130万円未満の場合で、政管健保で厚生年金の適用事業所の場合、年額にして約17万円程度になります。この社会保険料はA子さんの負担となり、家計の手取額を減らします。
  3. B夫さん(夫)の税金
     B夫さんの合計所得が1,000万円以内の場合は、A子さんの年収が103万円以内の場合は配偶者控除が使え、年収141万円未満までは配偶者手当が使えない代わりに配偶者特別控除が使えます。配偶者特別控除はA子さんの年収に応じて決められています。A子さんの年収が141万円以上になると、配偶者特別控除も使えなくなります。しかし、家計の手取額は増えます。
  4. B夫さん(夫)の会社から支給される配偶者手当
     多くの企業は、給与規定で被扶養配偶者(A子さん)の年収によって配偶者手当に制限を設けています。(妻の年収を103万円が限度としている企業が多い)仮にB夫さんの配偶者手当が月額1万5千円とすれば、年額18万円になり、A子さんが年収103万円を超えると、年額18万円相当のB夫さんの配偶者手当が受けられなくなります。家計の手取額は減少します。

 
表 A子さんの収入の変化と手取額
パート収入 800千円 1,030千円 1,031千円 1,290千円 1,300千円 1,500千円
社会保険料 0 0 0 0 153,408 175,728
雇用保険料 5,600 7,210 7,217 9,093 9,100 10,500
所得税 0 0 0 26,000 10,700 28,300
住民税 0 2,000 2,000 15,300 7,800 16,500
控除計 5,600 9,210 9,217 50,393 181,008 231,028
手取額 794,400 1,020,790 1021,783 1,239,607 1,118,992 1,268,972
表 B夫さんの収入と諸控除の変化
給与収入 7,000千円 7,000千円 7,000千円 7,000千円 7,000千円 7,000千円
配偶者手当カット 0 0 180,000 180,000 180,000 180,000
社会保険料 822,840 822,840 780,996 780,996 780,996 780,996
雇用保険料 49,000 49,000 47,740 47,740 47,740 47,740
所得税 240,800 240,800 228,900 255,900 255,900 266,900
住民税 175,200 175,200 163,300 185,300 185,300 196,300
控除計 1,287,840 1,287,840 1,400,936 1,449,936 1,449,936 1,471,936
手取額 5,712,160 5,712,160 5,599,064 5,550,064 5,550,064 5,528,064
表 A子さんの収入の変化と世帯の手取額(A子さんとB夫さんの手取額合計)
手取額合計 6,506,560 6,732,950 6,620,847 6,789,671 6,669,056 6,797,036
   
  ●結論
 表をご覧ください。家計の手取額で見た場合、A子さんが年収103万円を超えると、年額18万円相当のB夫さんの配偶者手当が受けられません。これが実質的に103万円の壁になっています。A子さんの年収が130万円以上(通勤手当も含まれる)の場合、B夫さんの被扶養者とは認められなくなり、A子さん自身が年額約17万円の社会保険料を負担することになります。これが130万円の壁になっています。下の表では家計の手取額は、Wの字を描くようなグラフになります。年収150万円を超えれば、青天井です。働く主婦にとって、配偶者手当のカット(103万円の壁)と社会保険料の負担(130万円の壁)の二つが障がいとなっています。ご主人と相談した上で働き方を決めることが重要です。